*。・。*1ページだけのストーリー集*。・。*
第1章 恨み辛みを活かす時
*
練習後。部のマネージャーである私は、先輩でもある部長と、カーテンで夕日を遮られた真っ暗な部室で二人きり。お互い向かい合って、膝が重なりそうな距離でパイプ椅子に座っている。
頼もしくて男らしい部長。密かに想いを寄せる私。
その中で部長は、自分の膝に乗せたラジカセの再生ボタンを押す。と、
♪ヒュ~ドロドロドロ……
密かに期待していたラブロマとは無縁な、幽霊定番のBGMが流れだす。
今度の文化祭、部の出し物はオバケ屋敷に決定し、私はメインの幽霊役。で、部長が演技指導をしてくれることに。
私はロングヘアーを前に垂らし片目だけを覗かせ、懐中電灯でアゴの下辺りから顔を照らし、一言。
「うぅーらぁーめぇーしぃーやぁー……」
こんな顔、部長に見せたくない。それでも羞恥に耐え、おどろおどろしく演じた。なのに、
「ダメダメ。まだ人間を捨てきれてない」
「えー……」
部長が幽霊BGMを止めて無情のダメ出し。あんまりだ。
「あのさ。オバケ屋敷のメインなんだよ?
本気で人を『ギャー!』と叫ばせてくんないと困るよ」
好きな人の前でそこまで怖く出来ません。ていうか、部長何気に演技に厳しくない? ここ運動部だよね? いつから演劇部に?
「なら、どうすれば?」
「うーん……あ、そうだ。日頃の恨み辛みを思い出してやってみたら?」
「うらみつらみ……ですか」
しかたなく頭の中を探ってみる。
恨み辛み恨み辛み……
私を押し退けて、部長にベタベタする女子達。
部長と話してるだけで、私を睨み付けてくる女子達。
私の靴の中に、画ビョウ・砂・ゴミを日替りで入れてくる女子達。
私が部長に(以下、エトセトラ)
出るわ出るわ。日頃の恨み辛みが、走馬灯のように。
あぁ恨めしい、恨めしいぃ……
「お。いい感じだ」
部長が狙ったように、再びラジカセをカチッ。
♪ヒュ~ドロドロドロ……
「うぅ~らぁ~めぇ~しぃ~……がぁーーーーっ‼」
溜まりに溜まった怨念を全て解き放った。
「ギャー怖っ! スゴい、やれば出来るじゃん!」
「ギャー! 部長、近いっ!」
喜んでる笑顔がステキだし、大きな手で私の顔を包み込んでるしで……幽霊役なのに、キュン死にしちゃう。
今だけ、私に恨み辛みを与え続けた女子達に感謝しよ。
〈完〉
練習後。部のマネージャーである私は、先輩でもある部長と、カーテンで夕日を遮られた真っ暗な部室で二人きり。お互い向かい合って、膝が重なりそうな距離でパイプ椅子に座っている。
頼もしくて男らしい部長。密かに想いを寄せる私。
その中で部長は、自分の膝に乗せたラジカセの再生ボタンを押す。と、
♪ヒュ~ドロドロドロ……
密かに期待していたラブロマとは無縁な、幽霊定番のBGMが流れだす。
今度の文化祭、部の出し物はオバケ屋敷に決定し、私はメインの幽霊役。で、部長が演技指導をしてくれることに。
私はロングヘアーを前に垂らし片目だけを覗かせ、懐中電灯でアゴの下辺りから顔を照らし、一言。
「うぅーらぁーめぇーしぃーやぁー……」
こんな顔、部長に見せたくない。それでも羞恥に耐え、おどろおどろしく演じた。なのに、
「ダメダメ。まだ人間を捨てきれてない」
「えー……」
部長が幽霊BGMを止めて無情のダメ出し。あんまりだ。
「あのさ。オバケ屋敷のメインなんだよ?
本気で人を『ギャー!』と叫ばせてくんないと困るよ」
好きな人の前でそこまで怖く出来ません。ていうか、部長何気に演技に厳しくない? ここ運動部だよね? いつから演劇部に?
「なら、どうすれば?」
「うーん……あ、そうだ。日頃の恨み辛みを思い出してやってみたら?」
「うらみつらみ……ですか」
しかたなく頭の中を探ってみる。
恨み辛み恨み辛み……
私を押し退けて、部長にベタベタする女子達。
部長と話してるだけで、私を睨み付けてくる女子達。
私の靴の中に、画ビョウ・砂・ゴミを日替りで入れてくる女子達。
私が部長に(以下、エトセトラ)
出るわ出るわ。日頃の恨み辛みが、走馬灯のように。
あぁ恨めしい、恨めしいぃ……
「お。いい感じだ」
部長が狙ったように、再びラジカセをカチッ。
♪ヒュ~ドロドロドロ……
「うぅ~らぁ~めぇ~しぃ~……がぁーーーーっ‼」
溜まりに溜まった怨念を全て解き放った。
「ギャー怖っ! スゴい、やれば出来るじゃん!」
「ギャー! 部長、近いっ!」
喜んでる笑顔がステキだし、大きな手で私の顔を包み込んでるしで……幽霊役なのに、キュン死にしちゃう。
今だけ、私に恨み辛みを与え続けた女子達に感謝しよ。
〈完〉