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*。・。*1ページだけのストーリー集*。・。*

第10章 天使へのプレゼント



 気づいたら私は、どこかの高層ビルの屋上にいた。

 背中の肩甲骨辺りには、真っ白い大きな翼が生えている。

 どうして……?

 頭の中を探っても、記憶まで真っ白で思い出せない。

 でも、前からこういう翼が欲しかった気がする。

 それを〝誰か〟に話したような……その誰かって……誰だろ?

 思い出したいけど思い出せない誰かのことを考えただけで、今着ているシフォンワンピースみたいに心の奥がふわりと軽くなって、ヤケにくすぐったく感じた。

 ……っ、と、ところでこの翼、動くの?

 私は、自分の気持ちから目を背けるように、翼を手探りで動かしてみようとした。

「っ、ひゃあ!」

 バサッとひと扇ぎしただけで体が一気に浮き上がり、あっという間に空の方へ。

 スゴい、飛んでる!

 あ……そっか。この翼、その〝誰か〟からのプレゼントかも。だとしたら私、相当おねだりしたんだろうなぁ。

 と、クスクスと笑いを漏らすと、それが翼にも伝わってささやかにはためき、羽根が地上へ柔らかく舞い落ちていく。

 それはまるで――


 *。・。*・。*


 ……何か降ってきた?

 立ち止まって見上げてみると、

「あ――雪だ」

 マジか。ホワイトクリスマスかよ。

 〝愛〟も病室から眺めてるだろうな。

 小さい頃からずっと、俺の周りを〝天使〟みたいにハシャギ回っていた愛。

 今年の春、一緒の高校に入学するも――すぐに病気が発覚。それから今でも入院をしている。

 早く会いたい。会ってコレを渡したい。

 待ちきれなくてポケットから取り出した小さな箱の中身は……

 ――天使の翼のモチーフがついたブレスレット。

 愛が雑誌で見て『いいなー欲しー』と、ねだるように騒いでいた物。

 対に広がる翼の中央には、小さくも光り輝くダイヤ。高額だったけど、愛の喜ぶ顔を励みにバイトをしまくった。

 ただ渡すだけじゃないけどな。

 頭の中で何度も何度もシミュレーションした告白。

 両想いになれたら、俺にとってのプレゼントは愛になる。

 これキッカケで、病気も良くなればいいのに……

「ん?」

 今、愛の笑い声が空から聞こえてきたような……?

「うわ。幻聴って、好きすぎかっ」


 愛への想いを更に募らせる自分が恥ずかしくなり、雪の中を逃げるように歩きだした。


〈完〉

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