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*。・。*1ページだけのストーリー集*。・。*

第11章 聖なる日にサプライズを(※)



「フンフンフン、フンフンフン、フフフーフフン」

 単身赴任先から今日だけ我が家に帰ってきた。定番のクリスマスソングをハミングしながら、二人分のプレゼントを手に下げて玄関前に立つ。

 突然の理不尽な出向には未だ腹立だしいが、今日ぐらいは忘れよう。

 妻と高校生の娘・マナには『忙しくて帰れない』と伝えてある。

 二人とも驚くぞ。反応が楽しみだ。

 ワクワクしながら玄関のドアを開けたが、

「あれ?」

 一階中がシーンと静まっていた。

 いないのか?

 とりあえず荷物を置くべく二階へ向かうと、寝室から複数の声がしてきた。

 え、何で寝室に?

 用心深く、ドアを少し開けて覗いてみた。

 途端――動けなくなった。

「あぁっ! 角川さんの大きくて壊れそうっ!」

「はぁっはぁっ……奥さん、僕を締め付け過ぎですよ。
 マナちゃんも興奮して、可愛いココが蜜で溢れてる」

「やぁん。角川さんイッちゃうっ」

 妻と娘。そして何故か、会社の本社に所属する同僚の角川がいて

 ――ベッドの上で、狂ったように3Pをしていた。

 角川は妻に騎乗位をされながら、顔の上で跨がっているマナの秘部に舌を這わす。

 な、んでっ……!

 悵然(ちょうぜん)なのか、激昂なのか。多分両方が原因で、体が自分でも抑えきれないぐらいに震えていた。

「はぁっ……アイツが遠くまで飛ぶように、裏で仕組んだ甲斐がありましたよ。
 あとは出向を理由に離婚して、一緒になりましょう」

「あんっ……私、必ず主人と別れますっ」

「ママぁ、早く角川さんを私のパパにしてぇっ」

『信頼出来る同僚』『愛する家族』

 二つの綺麗な言葉は……俺にはもうただの耳障りでしかなく、

 中の何かが、プチン……と外れた。

「……さて。サプライズの仕切り直しだ」

 一階へ降り、台所で目についた物を手にすると、

 再び寝室へ向かった。





「フンフンフン、フンフンフン、フフフーフフン」

 ははっ。サプライズ大成功。

 なんせ三人とも、最後まで叫び続けてたもんなー。

 上機嫌でハミングをしながら〝サプライズに使った包丁〟を置いて、リビングのソファーに悠々と座る。

 血まみれたままの手でシャンパングラスを持つと、三人がいる上の寝室に向かって掲げた。


「メリークリスマス」


〈完〉

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