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*。・。*1ページだけのストーリー集*。・。*

第14章 ラブラブなSNSにしてやるよ



〈マナミ君。家まで送ってくれてありがとね〉

 部屋で、相手の姿をポワンと浮かべながらコメを打ち、確認して送信。すると、すぐにピコンときた。

〈どういたしまして。
 次カナコちゃんに会うの、楽しみにしてる〉

「……はぁー、マナミくぅん……」

 たまらずスマホを抱きしめる。

 SNSのやり取りが死ぬほど幸せ……どうしよ。

 マナミ君は、高二にして初めての彼氏。他校の人なんだけど友達の紹介で知り合って。それからグループで何回か会っていたら――なんと、マナミ君から告白をしてくれたの!

 あんな素敵な人が私を好きだなんて……夢かしら?

「……カナコ姉ちゃん。ニヤニヤしすぎー」

「わっ! ちょっと、勝手に入ってこないでよ!」

「何回もノックしたぜ? なのに色ボケしてて気づかなかったのはそっちじゃん」

 いつの間にかそばに立ってて、シシシと悪そうに笑うコイツは、一つ下の弟・タカシ。姉である私にちょっかいを出してくる超生意気なヤツ!

「どれ。イケメン彼氏とどんなラブラブなやり取りしてるのか、見せてみろよ」

「あーっ! 何すんの、返して!」

 油断してひょいと取られたスマホ。取り返したいけど無駄にデカいタカシ。私が腕を伸ばしてもピョンピョン跳ねても一向に届かず。

「はぁ? なんだよコレ。つまんねぇ会話」

 と、私に届かないように更に上げながら、ホントにつまんなそうにして内容を盗み見る。

「うるさい! なら早く返して!」

「わかったよ…………ホレ」

 やっと差し出されたスマホをひったくると、

〈あのね。カナコ、さっきまでマナミ君と会ってたのに、もう会いたいの。
 大好き……ううん、ア・イ・シ・テ・ル〉

「なっ……何よコレー!」

 勝手に打たれたコメに、グワッと血が煮えた。

 タカシのヤツ、一瞬でこんなブリったコメをっ……!

 ワナワナと鋭く睨んでも、タカシは口笛吹いて知らんぷり。

 削除しようにも、すでに送信済みだし、既読済み。そして、とどめにピコンと返信が……。

 オワタ。絶対にキモいと思われてる。あぁ、私の恋よ。短い夢だったけど、ありがとう……。

 この世の終わり感半端ない中、SNSを覗いた……ら、


〈俺も。もう会いたいし――愛してるよ〉


「…………」

「おーい姉ちゃーん? 顔がゆでダコだぞー?」


〈完〉

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