*。・。*1ページだけのストーリー集*。・。*
第15章 気になる君に……
*
毎朝、通勤電車で見かける彼女。いつも本に目を向けている。
凛とした横顔は……時折、ふわっと蕾が開きかけたような笑みを浮かべたりする。
ありきたりな表現だけど……くすんだ心に癒しを与える一輪の花のよう。
俺は、降りる駅に着いたことにも気づかないほど、いつも彼女に見入ってしまうんだ。
気になる……。
けど、ヘタに声をかけてナンパだと思われたら……以降俺を嫌煙して、車両や乗る時間を変えてしまうかもしれない。
それでも俺は勇気を出して、彼女に一歩踏み出した。
「あっ……あのー……」
隣に立ち、鼓動を一回一回強く打たせながら声をかけると、
「っ、あっ……はい?」
彼女の表情が、ハッと驚いたように変わった。
怖がらせたんじゃないかと思わせる反応に怖じ気づき、たまらず身を引いてしまいそうになった。けど、めげずに耐え、そのまま続けようとした。
「あの……俺、山本と言います。
いつも君のことを電車で見かけてて、そのっ……
あっ、大丈夫ですっ。決して怪しい者じゃないので、安心して下さいっ」
って、何言ってんだ、俺。余計に怪しいっつーの!
ダメだ、失敗した……と、落胆しかかったら、
彼女は――ふわりと表情を和らげて、ふふっと小さく笑った。
「……えぇ、わかってます」
「え……?」
「私も……いつも見かけてましたから。あなたのことを……」
「…………っ」
吸い込まれそうなぐらい澄んだ瞳で、真っ直ぐに見つめてくる彼女。
俺は、顔に熱が帯びてくのを感じながら……
また君に見入ってしまっていたんだ。
〈完〉
毎朝、通勤電車で見かける彼女。いつも本に目を向けている。
凛とした横顔は……時折、ふわっと蕾が開きかけたような笑みを浮かべたりする。
ありきたりな表現だけど……くすんだ心に癒しを与える一輪の花のよう。
俺は、降りる駅に着いたことにも気づかないほど、いつも彼女に見入ってしまうんだ。
気になる……。
けど、ヘタに声をかけてナンパだと思われたら……以降俺を嫌煙して、車両や乗る時間を変えてしまうかもしれない。
それでも俺は勇気を出して、彼女に一歩踏み出した。
「あっ……あのー……」
隣に立ち、鼓動を一回一回強く打たせながら声をかけると、
「っ、あっ……はい?」
彼女の表情が、ハッと驚いたように変わった。
怖がらせたんじゃないかと思わせる反応に怖じ気づき、たまらず身を引いてしまいそうになった。けど、めげずに耐え、そのまま続けようとした。
「あの……俺、山本と言います。
いつも君のことを電車で見かけてて、そのっ……
あっ、大丈夫ですっ。決して怪しい者じゃないので、安心して下さいっ」
って、何言ってんだ、俺。余計に怪しいっつーの!
ダメだ、失敗した……と、落胆しかかったら、
彼女は――ふわりと表情を和らげて、ふふっと小さく笑った。
「……えぇ、わかってます」
「え……?」
「私も……いつも見かけてましたから。あなたのことを……」
「…………っ」
吸い込まれそうなぐらい澄んだ瞳で、真っ直ぐに見つめてくる彼女。
俺は、顔に熱が帯びてくのを感じながら……
また君に見入ってしまっていたんだ。
〈完〉