*。・。*1ページだけのストーリー集*。・。*
第3章 短冊に託したプロポーズ
*
「ねぇ。裕一の病気、本当に治るの?」
理沙は今日も俺を疑ってくる。
「治るに決まってんだろ。髪を犠牲にしてまで治療受けてんだぜ。な?」
だから、俺は今日も『嘘』でかわす。
被っているニット帽を取り、スキンヘッドを見せつけて、あっけらかんと振る舞う。
理沙を安心させるため、嘘をついて胸を痛めても、平気な顔をする。
『本当は治らない』上に、『持ってあと一年』という最悪な期限もあるなんて知られたら、酷く悲しませるから。
だけど、俺が急にいなくなっても同じか。
くそっ、一体どうすればっ……。
「……ほら、面会時間終わるぞ」
「うん。また来るからね」
理沙が名残惜しく病室を後にした直後、
「っ、ぐっ――」
耐えていた副作用の吐き気に強く襲われた。
「はぁっ、はぁっ……理沙っ……」
本当だったら今頃は――プロポーズをしていたのに。
理沙が泣いて喜ぶような言葉を伝えて、抱きしめて、一緒の名字にするはずだった。
けど……先のない俺は、未来を誓い合うことがもう出来ない。
それなら一層のこと、別れて……
「ん?」
病気よりも辛い決断の手前で目についたのは、理沙が座っていた丸イスの上にある、細長い紙。
手に取ってみると、
「……短冊?」
そうか。明日は七夕だ。病院にも笹が飾ってあるよな。
何か書いたのか? と裏返したら――
〈裕一がどこに行っても、
私のことを好きでいてくれますように〉
切実な願いに、涙が落ちていく。
「理沙っ……」
本当のこと知っていたのか。
「バカ。当たり前なことを願うなよ」
どこに行っても好きに決まってる。どこに行っても……
「やっぱり嫌だ。どこにも行きたくねぇ、別れたくねぇっ。理沙と一緒にいたいんだよっ」
『バカ』は俺の方だ。
死ぬことばかりで、大切なことを見失ってた。
*
七夕当日。
「理沙。俺どこにも行かないから、コレ書き直したぞ」
「あ、この短冊…………、っ!」
理沙に渡した短冊に、改めて託した願いは――
〈二人で幸せになりたい〉
ずっと伝えたかったプロポーズでもあった。
「その願い、一緒に叶えよ?」
「裕一っ……」
泣いて喜ぶ理沙を引き寄せた。
願いが本当に叶うように、強く……強く抱きしめた。
〈完〉
「ねぇ。裕一の病気、本当に治るの?」
理沙は今日も俺を疑ってくる。
「治るに決まってんだろ。髪を犠牲にしてまで治療受けてんだぜ。な?」
だから、俺は今日も『嘘』でかわす。
被っているニット帽を取り、スキンヘッドを見せつけて、あっけらかんと振る舞う。
理沙を安心させるため、嘘をついて胸を痛めても、平気な顔をする。
『本当は治らない』上に、『持ってあと一年』という最悪な期限もあるなんて知られたら、酷く悲しませるから。
だけど、俺が急にいなくなっても同じか。
くそっ、一体どうすればっ……。
「……ほら、面会時間終わるぞ」
「うん。また来るからね」
理沙が名残惜しく病室を後にした直後、
「っ、ぐっ――」
耐えていた副作用の吐き気に強く襲われた。
「はぁっ、はぁっ……理沙っ……」
本当だったら今頃は――プロポーズをしていたのに。
理沙が泣いて喜ぶような言葉を伝えて、抱きしめて、一緒の名字にするはずだった。
けど……先のない俺は、未来を誓い合うことがもう出来ない。
それなら一層のこと、別れて……
「ん?」
病気よりも辛い決断の手前で目についたのは、理沙が座っていた丸イスの上にある、細長い紙。
手に取ってみると、
「……短冊?」
そうか。明日は七夕だ。病院にも笹が飾ってあるよな。
何か書いたのか? と裏返したら――
〈裕一がどこに行っても、
私のことを好きでいてくれますように〉
切実な願いに、涙が落ちていく。
「理沙っ……」
本当のこと知っていたのか。
「バカ。当たり前なことを願うなよ」
どこに行っても好きに決まってる。どこに行っても……
「やっぱり嫌だ。どこにも行きたくねぇ、別れたくねぇっ。理沙と一緒にいたいんだよっ」
『バカ』は俺の方だ。
死ぬことばかりで、大切なことを見失ってた。
*
七夕当日。
「理沙。俺どこにも行かないから、コレ書き直したぞ」
「あ、この短冊…………、っ!」
理沙に渡した短冊に、改めて託した願いは――
〈二人で幸せになりたい〉
ずっと伝えたかったプロポーズでもあった。
「その願い、一緒に叶えよ?」
「裕一っ……」
泣いて喜ぶ理沙を引き寄せた。
願いが本当に叶うように、強く……強く抱きしめた。
〈完〉