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愛がはじまるとき

第1章 愛がはじまるとき

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 そのあと、満さんは、セックスについての話をしてくれました。
 人類が、子どもを産むためのものであったセックスから、楽しむためのセックスを発見してからずっと、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものだった、と言うのです。
 その証拠に、女性には、快感を得るためだけに存在する、クリトリスがあるとも、言いました。
 それなのに、いま多くの人がしているセックスは、男性が射精するのが目的となっているみたいで、間違っていると言うのです。
 だけどそれは、階級がうまれ男性優位の社会になってからの、たかだか数千年くらいのもので、人類の二十万年という歴史からみたら、ほんとに短いので、いずれ、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものに帰っていく、とも言うのです。
 わりと長い話でしたが、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものだというのが、よくわかりました。
 「里美さんは
  セックスを
  気持ちいい
  と思ったことは
  ないんでしょうね?」
 「ええ」
 「じゃあ
  どうして
  そんな人と…」
 「しかたなくです」
 「可哀そうに」
 思わず、ポロッと涙が落ちました。
 満さんに、可哀そうにと言われたことで、彼の強引さがはっきりわかったし、それを拒めない自分を、情けなく感じたのです。

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