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堅実メイドの献身

第3章 0時のティータイム

「うーん、これとこれかな。」

そう言っていくつかの容れ物から茶葉をひとすくい、ふたすくいとポットに入れていく。

ケトルの湯をゆっくり注ぐと、よい香りが広がった。紅茶の香りの中に微かに薔薇の香りも混じっている。ポットの中で茶葉が踊るのが、美しい。

「よい香りがですね。」

茶葉の香りで少しリラックスしたのか、つい言葉がこぼれた。

「ありがとう。そこの薔薇の蜜を入れて飲むといい。」

そう言って、カップに紅茶を注ぐ。

「ありがとうございます。いただきます。」

瓶に入った蜜をカップにすくい入れて、掻き回すと、甘い香りがより香る。
一口飲むと、口の中にも同じ香りがひろがった。

「美味しい。」

「ははっ、気に入ってくれたかな?」

「もちろんです。ただ、暎人様に紅茶を淹れて頂くなんて、恐縮です。」

「たまにはいいだろう。呼び出したのはちょっと伊東さんと話してみたくてね。」

暎人も自分で淹れた紅茶を飲む。
蜜は入れずにストレートだ。

「私と、ですか?何か気になる事があれば、お答えします。」

「そう堅くならないで、藤井や三崎さんが要るとあまりざっくばらんになれないだろう?だから今呼んだんだ。」

貴方の前でもざっくばらんにはなれません。というのが本音だが、心遣いは素直に嬉しい。

「ありがとうございます。私もこちらに来て3年程になりますが、暎人様とはあまり
お話しする機会がなかったので、嬉しいです。年齢も近いですし、何かあれば仰ってください。」

また、カップを口元に運ぶ。今度は二口飲む。紅茶の作用なのか、身体がじんわりと温まってくる。

「やっぱり年近かったんだね。ちなみにいくつか聞いてもいいかな?」

「28ですね。暎人様の3つ上になります。」

「じゃ、お姉さんだ。道理で落ち着いてるわけだね。」

「暎人様も実年齢より大分落ち着いておられますよ。紳士的な所作が身に付いておられるからでしょうか?年下だとあまり感じませんよ。」

暎人の話しやすい雰囲気の為か、普段より色々話してしまう。

「幼い頃から身に付いてるからかな?男として大人っぽく見られるのは嬉しいかな。」

「なるほど。この紅茶も本当に美味しくて、私が逆に見習わなければいけませんね。」

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