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ミストレス・ラブ

第3章 身体検査

翌日 

私はS先生の言う通りに誰もいない稽古場にいた。

いつもと違うのは、ここが普段レッスンをする稽古場と違うこと
先生いわく、ここは「第1スタジオ」といって本部生がメインで使っていた稽古場ということだった。

もっとも現在は舞台の小道具資材置き場になっていて、ほとんど使われていない。
本部生の子の噂によれば幽霊がでるとか、入るだけで不幸になるとか
いわゆる「いわくつき」の稽古場だった。

私はだんだん怖くなって、不安をかき消すようにストレッチに励んだ。
うっすら埃が舞う床で、入念にしたストレッチをしたあと(ヨガマットを持ってきてよかった)
バーに移ってリンバリングと呼ばれるストレッチを始めた。

特にバーに片脚を乗せそのまま身体を預けるハムストリングを伸ばすストレッチが好きだった。

そのままアラセゴンにして後ろのアチチュードにして今度は前側の太ももを伸ばす。
(テクニックは無いけれど柔軟性には自信があって、よく学校でも頼まれてもいないのにI字バランスを披露して遊んでいた。)

そのまま、さらにパンシェにした時だった。

バーの壁のあちこちに印がしてあるのに気づいた。
1つは足元、もう1つはバーから50cmくらい高い位置に。

「懐かしいわね」

静かな稽古場にS先生の低い声が響いた。

私はとっさに脚を組み替えて先生の方を向いた。

「なぜ、ここへ呼んだかわかるかしら?」

先生はいたずらに微笑みながら、長い指をいきなり私の太腿に沿わせた。

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