歪ーいびつー
第6章 優雨
ーーーコンコン
目の前の扉を軽く叩くと、数秒後にその扉は開かれた。
「はーい。……あ、優雨」
「遊びに来たよ。……夢は? 」
「飲み物買いに出たよ。もう帰ってくるんじゃないかな? 」
ノブを掴んで扉を開けたままの朱莉とそんな会話を交わす。
先程、一人廊下を歩いていると窓から見える綺麗な湖が目に止まった。
その先には富士山がハッキリとその姿を見せている。……綺麗。
視線を下に移すと、外にはベンチとテーブルが置かれている。
夢達を誘って一緒に見たいな。
そう思った私は、外は寒いので三人分のホットココアを買ってから夢達の部屋へと来た。
……入れ違ったのかな?
「……あっ。夢帰ってきたよ」
そう言って扉から顔を覗かせる朱莉の視線を辿ると、私の来た方向とは逆の方から歩いてくる夢の姿があった。
その隣には、隼人とかいう男。
金髪でいかにも軽そうなこの男は、夢の事が好きなんだとすぐにわかった。
隠す気などないのであろうその態度は、誰の目から見ても明らかだ。
ただ、当の本人である夢はきっと気付いていない。
隼人は私達の前まで夢を連れてくると、「夢ちゃん、またね」と言ってそのまま立ち去って行った。
俯く夢の顔を覗き見ると、今にも泣き出しそうな顔をしている。
「……今の男と何かあった? 」
そう聞けば、フルフルと頭を横に振る夢。
私は夢の頭を優しく撫でると、話を聞く為に元々誘うつもりでいた外へと誘った。