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歪ーいびつー

第8章 朱莉

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「あ、朱莉! 優雨ちゃんがね、先にテント戻ってるねって言ってたよ! 」

トイレから出てきた私に気付いた美沙が、私の方を向きながらそう告げる。

「オッケー! わかった、ありがとう! 」

そう返事をした私は、手を洗う為に手洗い場へと向かった。

「朱莉ちゃん達はいいよねー。涼くん達と同じ班で」
「涼くんも奏多くんも楓くんも、皆カッコイイもんねー」
「うちの班なんて健と石井と岩松だから。超地味」
「でもさ、奏多くんてちょっと……話し掛けにくいよね? 」

手洗い場に着くと、既にそこにいた七海と美沙がそう話し掛けてくる。

「そうかな? 全然普通に話してくれるよ? 」

私が手を洗いながらそう返すと、美沙が私を見ながらニヤリと笑って口を開いた。

「それってさ、朱莉だからだよ。奏多くん他の子とはあまり話さないもん」
「あ、それってわかるかもー。奏多くんて朱莉ちゃん達の前だとよく笑ってるしねー」
「朱莉の事好きなんじゃない? 」

美沙の言葉に思わずカッと顔が熱くなる。

「そ、それはないよ……」

そんな事を言いながらも、そうだったら嬉しいな……と私は一人心の中で思った。



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「夢……本当に大丈夫? 」

心配そうに夢を見つめながら声を掛ける涼。
虫に驚いて泣き出してしまった夢は、未だにボロボロと涙を流している。

「大丈夫だよ、夢。俺がついてるから」

そう言って夢の右手を握る奏多を見た私は、いいなぁ……奏多と手繋げて。と、夢を羨ましく思う。

「じゃあ……こっちは俺ね? ……これでもう怖くないね? 」

楓がそう言って左手を握ると、夢は躊躇《ためら》いがちに小さくコクリと頷いた。

「あと少しだから頑張ろう、夢」

涼が優しい笑顔でポンポンと夢の頭を撫でてあげると、夢はポロポロと涙を流しながらも大きく頷く。
「じゃあ行こうか」と言う涼の言葉を合図に、再び歩き出した私達。

暫く歩くと、私は少し後ろにいる奏多をチラリと盗み見た。そしてーー気付いてしまった。
泣き止んではいるものの、ビクビクと怯えて歩く夢。その右手をしっかりと握りながら……愛おしそうに夢を見つめる奏多。

私じゃない……奏多が好きなのは、夢なんだーー。


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