
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第12章 君と私とロバと……
ひぃくんが白馬に乗った王子様……?
それは勿論嬉しいけど、目の前のキッズコーナーにはそれらしきアトラクションは見当たらない。
何を言ってるの……?
「……ひぃくん、何の事を言ってるの?」
「んー?あれだよ、ほら。馬がいるでしょ?」
ニッコリと微笑んで指を差すひぃくんを辿ってみても、そこには馬なんて見当たらない。
「……馬なんかいないよ?」
「いるよー、ほら」
ひぃくんはフニャッと笑ってそう言うと、私を引き寄せて自分の目の前へ立たせた。
「ね?ほら、あそこ」
腰を屈めて耳元で囁くひぃくん。
ひぃくんの指差す方向に見えるのは、ゆっくりと進むパンダの上に乗った小さな男の子の姿。
あれは……
確か、電動で動くメロディペットというやつ。
「パンダ……?」
「違うよ、その隣」
ひぃくんの言葉に視線を横に移すと、更にもう一台のメロディペットが……。
え……まさか……。
嫌な予感に、思わず顔が引きつる。
「あれに乗ればお姫様になれるよー」
「ひぃくん……」
……やっぱり。
ひぃくん、私あんなの乗れないよ……。
私は顔を引きつらせたまま後ろを振り返ると、ひぃくんに向けて口を開いた。
「ひぃくん、私あれには乗れないよ……」
「どうして? お姫様になれるよー?」
「あれ……子供用だし……」
大体……あれはどう見ても馬じゃない。
ロバだよ、ひぃくん……。
「大丈夫だよー、花音は可愛いから」
私を見てニッコリと微笑むひぃくん。
……いや、意味がわかりません。
「お馬さんに乗って一緒に写真撮ろうねー」
そう言ってフニャッと笑うと、私の手を握って歩き出したひぃくん。
ーーー?!
私は慌てて足を止めると、真っ青な顔をして口を開いた。
「ひ、ひぃくん!! あれは馬じゃないよ?!」
「馬だよ?」
「……ロバだよっ!!!」
思わず目を見開いて大声を出す私。
一体どんな視力してるのよ……。
どう見てもあれはロバだよ、ひぃくん。
あんなの私乗れないよ……。
「え……? 馬だよ、ねぇ?」
私の言葉に不思議そうな顔をしたひぃくんは、そう言うとお兄ちゃん達を見た。
