
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第12章 君と私とロバと……
そのままズルズルとキッズコーナーまで連れて来られた私。
気が付けば、私の目の前にはロバのメロディペットが……。
嫌だ……。
こんなの乗りたくない。
泣きそうな顔をしてお兄ちゃんを見ると、プッと笑って目を逸らした。
酷い……。
助けてくれないの?
「花音おいでー」
ひぃくんの声が聞こえた瞬間、フワリと宙を浮いた私の身体。
……え?
一瞬の隙にロバに乗せられてしまった私は、後ろに跨《またが》ったひぃくんにガッチリと抱きしめられる。
私の顔からは一気に血の気が失せ、真っ青になった顔がヒクヒクと痙攣し始める。
「翔《かける》、写真撮ってー」
そう言ってお兄ちゃんに携帯を渡したひぃくん。
え……待って……嘘でしょ……?
「しゅっぱーつ!」
嬉しそうな声を出したひぃくんは、ロバの首元にお金を投入すると「花音良かったね、お姫様だよー」と言って私をキュッと抱きしめた。
軽快な音楽が流れ出し、ゆっくりと動き始めたロバ。
何これ……。
……歩いた方が全然早いよ。
ノロノロと歩くロバの背に跨《またが》り、私の背後で嬉しそうにハシャいでいるひぃくん。
軽快な音楽のせいもあってか、何だか凄くバカっぽい。
すれ違う子供達は、私達を見て不審そうな顔をする。
「ママー。見て、大人が乗ってるよ」
私達を見て指を差す女の子に、笑顔でヒラヒラと手を振るひぃくん。
「白馬に乗った王子様とお姫様だよー」
「……それロバだよ」
ひぃくん……
あんなに小さな子でもロバだってわかってるよ……。
「……馬だよ?」
ニッコリと微笑むひぃくんに、不審な顔を見せる女の子。
「里香ちゃん、ダメよ」
近くにいたお母さんが、引きつった顔をして女の子を私達から遠去ける。
それではまるで、私達が不審者みたいだ。
軽快な音楽と共にノロノロと動くロバ。
その背に跨《またが》り、ニコニコと微笑んで白馬に乗った王子様だと言い張るひぃくん。
うん……
確かにヤバイ奴かもしれない。
一緒に乗っている私もそうなのだろうか……。
