
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第14章 煩悩はつまり子煩悩?
「長かったねー」
「私なんて寒さで足の感覚がないんですけど」
「どこかお店に入って暖まろうか」
無事に初詣でを済ませた私達は、寒い寒いと言いながら出口へ向かって歩き始めた。
モニターを見てみると、もう年明けから二時間も過ぎている。
本当に長かった……。
未だに混雑する境内の前にできた行列を横目に、私はすぐ横にいるひぃくんをチラリと見た。
何やら必死に参拝していたひぃくん。
「……ねぇ、ひぃくん。どんなお願い事したの? 」
先程、中々終わらないひぃくんに痺れを切らしたお兄ちゃんが「まだ足りないよー」と大声を上げるひぃくんを無理矢理引きづりおろしていた。
その光景を思い出した私は、何だか可笑しくてクスッと笑い声を漏らす。
「花音と早くエッチできますようにって! 」
ーーー?!!
聞くんじゃなかった……。
大声でそう言ったひぃくんに、一瞬で後悔した私。
フニャッと小首を傾げて微笑むひぃくんを見上げ、私は笑顔を引きつらせて固まった。
貴方には……恥ずかしいという感情はないんですか?
「ーー残念だったな、響。願い事は他人《ひと》に言ったら叶わないんだよ。お前は一生DTだ」
前方を歩くお兄ちゃんが、後ろを振り返って勝ち誇った様な顔を見せると、ひぃくんを見てフッと鼻で笑った。
「そんな事ないよー」
ブーブーと文句を言いながら、私の隣からお兄ちゃんの方へと移動するひぃくん。
「いいや、お前は一生DTだよ。大体、俺が許すと思ってるのか? 許すわけないだろ」
「翔《かける》……ま、まさか……。翔は花音のお兄ちゃんなんだよ!? ダメだよ、花音が可愛いからってエッチなんてしたら……っ! 」
お兄ちゃんの肩を掴みながら、目を見開いて真っ青な顔をするひぃくん。
「はっ……?! 何でそうなるんだよっ! 」
「ダメダメダメーッ! 花音は俺のお嫁さんだよーッ! 」
前方でワーワーと騒ぎ出したひぃくんを眺め、顔面を引きつらせる私。
何なのその気持ち悪い発想。
そんな事あるわけないじゃない……。
変な冗談はやめてよ、ひぃくん。
真っ青な顔をしてお兄ちゃんの肩を揺らすひぃくん。
その顔はとても真剣な顔をしていて……
本気で言っているところが、ひぃくんの恐ろしいところだ。
