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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第3章 君はやっぱり変でした



「スパって何?」

私達の会話を黙って聞いていたお兄ちゃんが、ひぃくんの腕を引っ張りながらそう尋ねた。

「さっき廊下で話してたんだよ男の子と……。ねぇ、花音の初めては俺に捧げてくれるでしょ……?」

お兄ちゃんをチラリと見たひぃくんは、再び私に視線を向けるとそう言った。

さっきの発言からすると、初めてスパに行くのはひぃくんと一緒にって意味なんだろうけど……。

何でそんな変な言い回しをするのだろう。
わざとなの?

目の前で瞳を潤ませるひぃくんを見て、思わず溜息が出る。

「それは無理だよひぃくん、もう約束しちゃったから」

私がそう告げると、ひぃくんは目を見開いて固まってしまった。

「花音、男と一緒に行くの?」
「えっ……あ、うん。何人かで行くんだよ」

お兄ちゃんからの質問に、ひぃくんをチラリと横目で見ながら答える。
ひぃくん大丈夫かな……?

ピクリとも動かなくなってしまったひぃくん。
そんなひぃくんを少し心配しながら、お兄ちゃんの方へと視線を移す。

「ダメ」
「へっ……?」
「危ないから行ったらダメ」

素っ頓狂な声を出した私に、再度ダメだと告げるお兄ちゃん。
驚いた私は、一瞬固まってお兄ちゃんを見つめる。

すると突然、固まったまま動かなかったひぃくんが大声を出した。

「花音っ!!」

ーーー!?

ひぃくんに抱きつかれ、ゆっくりと倒れてゆく身体……。
気付くと私は、ひぃくんに押し倒されていた。

「花音……っ花音……」

私を抱きしめ、胸元でスリスリと顔を動かしながら涙を流すひぃくん。

突然の出来事に呆然とする私。

ゆっくりと視線を下へ向けると、そこにはひぃくんのつむじが見える。
その更に下の方へと視線を移すと、私の胸元で泣いているひぃくんが。

私の胸元で……
胸……元……。

「いやぁーー!!」

私の叫び声で、呆然として固まっていたお兄ちゃんが慌てて動き出す。

お兄ちゃんが離そうとしても、中々離れないひぃくん。

私の胸元でシクシクと泣くひぃくんを見つめ、私は思った。

そんな事で泣かないでよ……。
ひぃくん、鼻水垂れてるよ。

あぁ……私の制服にひぃくんの鼻水が……。

何だか急に阿呆らしく思えてきた私は、その場をお兄ちゃんに任せて身体から力を抜くと、ただジッと目の前の光景を眺めたーー。

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