
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第20章 ★お兄ちゃんは心配なんです〜side翔〜
「おにーちゃんっ!ひぃくんがおーじさまくれたよー! かわいい? 」
「えっ?! ……あ、あぁ。良かったね、花音」
嬉しそうに笑う花音を見て、俺は引きつった笑顔でそう返事をする。
掴んでいた手首を離すと、そのまま嬉しそうにキッチンへと消えてゆく花音。
どうやら、お母さんに報告しに行ったようだ。
嬉しそうにキャッキャとはしゃぐ花音の声を聞き、俺はホッと溜息を吐くと響を見た。
そんな俺を見て、ヘラッと笑って小首を傾げた響。
「花音、喜んでくれたねー。良かったー」
ホントに良かったな……泣かなくて。
俺は花音が泣き出すんじゃないかと焦ったよ。
全く……響といると本当にハラハラして疲れる……。
ヘラヘラと笑う響を横目にした俺は、気苦労の絶えない幼なじみにそんな事を思う。
その日から、我が家の冷蔵庫には俺の作ったウサギのマグネットと、響の作った不気味なマグネットが並んで貼られた。
それを見て、「かわいい、かわいい」と嬉しそうにする花音。
俺はそんな花音にたいして、響のマグネットと同等扱いな事を不満に思い、また、花音自身のセンスが心配にもなった。
それでも、花音の手前何も言えない俺は、冷蔵庫を開ける度に「……どこが可愛いんだよ」と呟いては響の作ったマグネットを指で弾いて不満を漏らした。
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「……」
冷蔵庫に手をかけた俺は、目の前のマグネットを見つめながら、そんな昔の事を思い出す。
俺はあの時……間違った対応を取ってしまったのだろうか……?
チラリとリビングの方へと視線を移すと、馬の頭を被った全身白タイツの響を眺める。
花音の横で、嬉しそうに馬の頭を揺らしてヘラヘラとする響。
何なんだよアレは……。
花音……お前の理想の王子様は……アレなのか?
本当にアレでいいのか……?
昔から変わらぬ妹のセンスに不安を覚えた俺は、大きな溜息を吐くと冷蔵庫を見た。
「全部お前のせいだ……響」
俺は目の前の不気味なマグネットを指で弾くと、今日も小さく不満の声を漏らしたーー。
ー完ー
