
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第22章 ★お兄ちゃんの受難
この春無事に大学生となった俺には、最近ちょっとした悩み事がある。
悩み……というよりは、心配事に近い。
花音の様子が最近どうもおかしいのだ。
目の前で食事をする花音をチラリと見てみると、小さな溜息ばかり吐いてさっきから全然箸がすすんでいない。
「花音、どうした? ……何か悩み事でもあるのか? 」
「えっ……!? い、いやぁ……べっ、別にっ? なっ……何もないよ!? 」
明らかな動揺を見せる花音に、少しだけ細めた目で疑いの眼差しを向ける。
すると、そんな俺の視線に気付いた花音は痙攣《ひきつ》った顔をしてヘラッと笑った。
……怪しい。
絶対に何か隠している。
一体何だっていうんだ。
俺には言いにくい事なのか?
もしかして……。
「……響との事か? 」
その言葉にピタリと動きを止めた花音は、焦ったようにして急に席を立ち上がった。
「……っな、何だか眠くなってきちゃったなー!? 私もう寝るねっ!ご馳走さま、お兄ちゃん! おやすみっ! 」
口早にそう告げると、バタバタとリビングを去って行った花音。
何だよあれ……。
怪しさ全開じゃないか。
眺めていた扉からテーブルへと視線を移すと、花音が残していった食器を見て小さく溜息を吐く。
「全然食べてないじゃないかよ……」
ほとんど口のつけられていない、花音の大好物のハンバーグ。
それを眺めて、もう一度小さく溜息を吐く。
「俺が立ち入る事でもない……か……」
とはいえ、やはり気になるのが俺の性分。
無理矢理聞き出す事も……まぁ、できなくはないけど……。
あまりしつこくして花音に嫌われたくもない。
花音だってもう高二だ。
色々と俺には干渉されたくない事もあるだろうし、ここは一先《ひとま》ず黙って様子を見とくか……。
そんな考えに落ち着くと、止めていた箸を再び動かす。
「……昔は何でもすぐ俺に頼ってきてたのにな……」
一人きりになったリビングでポツリと小さく呟くと、俺は食べかけだったハンバーグを口の中へと入れたーー。
