
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第3章 君はやっぱり変でした
「楽しいね、花音」
私の背中にピタリとくっついているひぃくんが、嬉しそうな声でそう言った。
あの後、ひぃくんに強引に連れられてやってきたのは流れるプール。
さっきまでいたのに……。
また私はプールへ逆戻り。
『さっき遊んだから嫌』
私がそう言うと、狡《ずる》い狡いと駄々をこね出したひぃくん。
それを見ていた斗真くんが、困ったような笑顔で『花音ちゃん、行ってきてあげたら?』と言った。
ーーそれで今のこの状況。
二人で密着したまま浮き輪に入り、プカプカと浮かんでゆっくりと流れる。
え……
何なのこれ……。
思わず顔が引きつる。
一人用の浮き輪に無理矢理入ってきたひぃくん。
二人で入ると身動きすら取れない。
ミッチミチに浮き輪に入ったまま、私達は今プールに浮いているのだ。
「ママ見てー。ラブラブだねー」
「そうね、ラブラブね」
小さな男の子を連れた親子連れが、クスクスと笑って私達の横を流れてゆく。
「ラブラブだねー花音」
身動きの取れないのをいい事に、ひぃくんはそう言うと私の頬にキスをした。
これは新手の拷問だろうか……?
まだまだ半分以上もあるプールの先を眺める。
後ろで楽しそうに話すひぃくんの声を聞きながら、私は最後まで顔を引きつらせたまま黙って浮かんでいたーー。
