
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第5章 そんな君が気になります
え……?
そのまま私の方へ向かって走ってくるひぃくん。
え、何?どうしたの?
あっという間に私の目の前まで来たひぃくんは、フニャッと笑うと口を開いた。
「花音、一緒に来て」
「へっ……?」
ひぃくんを見上げて間抜けな声を出す私。
視線を下に移してひぃくんの手元を見てみると、そこには白いカードが握られていた。
あ、借り物競走……。
私を借りに来たの?
走るの苦手なんだけどなぁ。
そんな事を思いながらも、わざわざ借りに来たひぃくんを無下にする事もできず、私は渋々ながらに重い腰を上げた。
「ひぃくん、私走るの苦手……」
「うん、知ってる」
私の言葉に、ニコリと微笑んで答えるひぃくん。
知ってるなら何で私のとこ来たのよ……。
ただでさえ体育祭になんて参加したくないのに。
プクッと頬を膨らませると、ひぃくんを見上げてキッと睨む。
「可愛いー花音。大丈夫だよ」
私の頬をツンッと突《つつ》いたひぃくんは、そう言うと突然私を抱え上げた。
ーーー?!
こ、これは……
世に言うお姫様抱っこというやつでは?!
「しっかり掴まっててね」
そう告げると一気に走り出したひぃくん。
こ、怖いっ!
落ちる、落ちるよひぃくん!
私は慌ててひぃくんの首にしがみつく。
私を抱えているというのに、グングンとスピードを上げて走るひぃくん。
周りでは女の子達が悲鳴を上げている。
流れる景色の中、私はひぃくんの背中越しにグラウンドを眺めた。
あ、校長先生が走ってる……。
歳なのに……借りられたんだ、可哀想。
必死に走る校長先生を見つめ、そんな事を思った。
