
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第8章 そんな君が大好きです
今にも泣き出しそうなひぃくんを見ると、何だか自分が悪者になった気分になってくる。
「……もういいよ。来ちゃったものはしょうがないから……ほら、ひぃくん行くよ!」
私はそう言うと、ひぃくんの手を取って歩き出した。
チラリと隣の様子を伺うと、ニコニコと幸せそうに微笑むひぃくんがいる。
とりあえず泣き出さなくて良かった。
私も大概ひぃくんには甘いよね……。
そんな事を思いながら、小さく溜息を吐く。
「ひぃくん……浴衣似合ってるね」
ポツリと小さな声でそう言うと、私を見たひぃくんが優しく微笑む。
「ありがとう。花音も似合ってるよ、凄く可愛いー」
そう言ってフニャッと笑うひぃくん。
私が言った言葉は嘘ではない。
あまりにもカッコイイひぃくんに、思わず出てしまった本音だった。
浴衣を着たひぃくんはいつも以上にカッコ良く、何だかもの凄い色気を感じる。
私はドキドキと心拍数の上がってきた胸を抑えると、ひぃくんから視線を外して地面を見た。
何これ……。
違う、違うよ絶対。
……そんな事あるわけない。
私は気付き始めた自分の気持ちに蓋を閉じると、繋がれた手の温もりに集中しない様にギュッと目を閉じる。
それでも意識は繋がれた手に集中してしまい、私はドキドキと高鳴る胸に戸惑った。
何これ……何なの……?
早く静まってよ、お願い……っ。
「花音とデートなんて嬉しいなー。綿菓子あるかなー? 一緒に食べようねー」
私の隣で楽しそうに話すひぃくん。
私はそんなひぃくんの声を聞きながら、ただずっと……
繋がれた手に意識を集中させていたーー。
