
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第9章 君は変な王子様
「おい、ひっつきすぎだろ」
お兄ちゃんはそう言うと、ひぃくんの首根っこを掴んで私から引き離す。
新学期が始まり、もう気付けば九月に入ってしまった。
時間の流れとは早いものだ……。
一人しみじみとそんな事を考えいると、お兄ちゃんから逃げてきたひぃくんが再び私の後ろへ座った。
後ろから私を抱きしめる様に座ったひぃくんは、フォークで唐揚げを突き刺さすと私の目の前へと差し出す。
「はい、あーん」
まるで二人羽織状態。
花火大会の日以来、ひぃくんの愛情表現は激しさを増した。
お兄ちゃんにはまだ言ってないのに……。
これではバレてしまう。
鬼の逆鱗に触れたくなかった私は、お兄ちゃんには内緒にしようと決めていたのだ。
「おい、何なんだよそれ。自分で食べた方が食べやすいだろ」
呆れた顔で溜息を吐くお兄ちゃん。
仰《おっしゃ》る通りです、お兄ちゃん。
私だって自分で食べたい。
いくら言っても頑として譲らないひぃくん。
ひぃくんに愛されるのは嬉しい。
そんなの当たり前。だって好きな人だから。
そんなひぃくんを無下にする事もできず、私は毎回顔を引きつらせながら、この地獄の二人羽織に付き合っているのだ。
私は目の前の唐揚げにパクッと食いつくと「ありがとう」と小さく呟く。
「可愛いー」
そう言って私を抱きしめるひぃくん。
「響……刺さってる」
「えー?」
私の頬に突き刺さるフォークを指差して、お兄ちゃんは盛大な溜息を吐いた。
「だからやめろって言ってるのに……。毎回毎回、お前らアホかよ」
私の顔を覗き込んだひぃくんは、私の頬に付いた三つの穴の跡を摩《さす》りながら、悲しそうな顔をして口を開いた。
「ごめんね、花音。痛かったねー」
「だ、大丈夫だよ、ひぃくん」
ひぃくんの愛情表現は激しい。
……そして、たまに痛い。
私は顔を引きつらせながらも、懸命に笑顔を作ってひぃくんを見たーー。
