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雪野かなえに想いを込めて

第8章 チョコよりも極上のSweetS


        ***

翌朝……。

「おはよう、夢蘭。ケーキ……ありがとうな」

「えっ?」

 テーブルの上にあるのは、昨夜、捨てたはずのハートのラッピング袋。

「なんで、捨てちゃったのさ? あたし好みの甘さ控えめのガトーショコラ、すっごくおいしかったよ」

「……それは、こっちのセリフだよ? なんで……? それに、何回作っても、ぐちゃぐちゃに崩れてしまって。かなえさんにあげるやつなのに、うっ……うっ……。こんなんじゃ、他の女の子には勝てないって……! わ、私……私……!」

 ふわっ。

 かなえさんは私を抱き締めてくれて、優しく涙を拭いてくれる。

「夢蘭って本当に泣き虫さんだね。ごめんね、夢蘭のがあるから断れば良かったね。ファンの子達の気持ち、断ったら悪いかなって思って、持って帰ってきちゃったのが悪かったよ」

 そして、いつものように頭を撫でてくれる。

「夢蘭のお菓子、楽しみにしてたんだよ? あたしのために材料、買ってきてくれてたの知ってたから。夢蘭、隠すの下手くそなんだもん。可愛いなあ、あたしのことそんなに……。自惚れちゃうよ、あたし」

「自惚れていいよ。だって、私、かなえさんしか見えないもん。かなえさんのこと誰よりも大好きだもん」

「ほんと……可愛い。これ、お返し」

 かなえさんは、不意討ちに私にキスをした。びっくりして、涙もとまってしまって。だって、いっつも恥ずかしがって逃げるでしょ? って。

 胸の奥が熱くなって、幸せで……。この人を好きになって本当に良かったって何度かめの私こそ、自惚れターンに入って……。

 かなえさんは、私にとっては、チョコよりも甘い極上のSweetSだ。

「……ほんと、大好き」

「……あたしも」

 そう交わし合うと、本日、二度めの口付けを交わしたーー。

 深く、深くーー。

 幸せで極上なこの瞬間。



fin.

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