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でも、愛している

第1章 でも、愛している

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 わたしが、清さんと愛しあうようになったのは、清さんの「セックス論」を聞いたときからです。
 人類が、子どもを産むためのものであったセックスから、楽しむためのセックスを発見してからずっと、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものだった、と言うのです。
 その証拠に、女性には、快感を得るためだけに存在する、クリトリスがあると言います。
 それなのに、いま多くの人がしているセックスは、男性が射精するのが目的となっているみたいで、間違っていると言うのです。
 だけどそれは、階級がうまれ男性優位の社会になってからの、たかだか数千年くらいのもので、人類の二十万年という歴史からみたら、ほんとに短いので、いずれ、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものに帰っていく、とも言うのです。
 そして、セックスは、したいと思ったときにすればいいのであって、いろいろな理由をつけて、我慢してしまういまのセックス観は、間違っていると言うのです。
 「食欲と睡眠欲と性欲を
  三大欲望というでしょう
  食べるのを我慢するのはつらいし
  食べないわけにはいきません
  食べないと死にます
  眠るのも我慢できません
  眠れないとき薬を飲んででも眠ろうとします
  セックスも我慢するのはつらいものです
  セックスを我慢しつづけると
  鬱病になるといわれています
  セックスは我慢しては駄目なんです」
 はじめて聞く「理論」でしたけど、納得はできました。
 でも、そのあと、清さんが、
 「というわけで
  手嶋さん
  私と
  セックスを
  しませんか」
 と言ったときには、ほんとにびっくりしました。
 なんてことを言いだすんだこの人は、と思ったのです。
 「というわけで」と言うが、なにが「というわけ」なのだとも思いました。
 言い方も、ストレートすぎるし…
 だからわたしも、ストレートに返しました。

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