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金曜日のおじさま

第12章 doce

『隣町で花火大会があるから行きたいの』

今朝、ベッドの上でビアルネスが唐突に言ってきた。

オレは眠たい目をこすって状況を把握するのに少し時間が掛かった。

「ん〜、今日?」

うんうん、と可愛く頷いている。

今日は定休日だった。彼女も分かっていて誘っていると思う。

「うん、イイよ。花火見に行こう」

オレは彼女を抱き寄せて頬にブチュ〜とキスをしてから、シャワーを浴びにバスルームに向かった。

朝食を食べながら、ふと思い立った。

「あ、どうせ花火見に行くなら浴衣着て行こうか」

「浴衣!ビーも着たい。初めてかも」

「え、そうなの?子どもの頃着たことあるでしょ?」

「甚平とかならあったけど、浴衣はないかも」

って事は浴衣を買いに行くところから始めなくちゃいけなくなった。

オレたちは支度を済ませて、浴衣を買いにショッピングモールに向かった。

「おじさまは浴衣持ってるの?」

「持ってる。着付けも出来るよ」

「すご〜い、おじさま素敵」

オレは明るい色の浴衣を勧めたのだが、ビアルネスは落ち着いた柄の浴衣を選んだ。

「コレでイイの?ビーはコッチの方が似合うんじゃない?」

「うーん、そうかもだけど…子供っぽく見えちゃうのはイヤ」

後々気付いたのだが、オレと一緒にいて親子だと思われたくなかったらしい。

そんな気づかいにオレの胸はキュ〜っと苦しくなった。

◆◆
自宅に戻り、さっそく浴衣に着替えた。

「おじさま、どう?」

「うん、よく似合ってるよ」

彼女は楽しそうにクルクル回って全体をチェックしている。

その間にオレも浴衣に着替えた。初めて見る浴衣姿にビアルネスの目が釘付けになっていた。

「いつまで見惚れてるんだ。行くぞ」

「おじさま、和装もステキ〜」

イチイチ、くすぐったい…可愛いすぎる。

あとで絶対脱がせてヤッてやる!

正直、オレもビアルネスの和装に釘付けだった。

白く細い首、おくれ毛、うなじ…

今は無邪気に屋台の焼き物を頬張っている。

定番のりんご飴も欲しがったので買ってあげた。

花火を見上げる横顔を時々盗み見ながら、夜空に咲く大輪を満喫した。

帰り道、ビアルネスの様子がおかしい

「どうした、疲れちゃった?」

「足痛くなっちゃった…」

よく見ると、草履の鼻緒で指の股に肉刺が出来ている。




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