数珠つなぎ
第5章 お前らを逃さない
「んあっ…もっと、ちょう…だいっ」
激しく揺さぶられる身体。
母親に俺を売られてから、毎晩のように色々な男に抱かれる。
以前の様に働きに出ることはなくなったけど、結局は働き方が変わっただけ。
でもいつからか抱かれるのは夜だけになって、夜以外は前の俺には無かった自由な時間が与えられた。
特に社長は俺の身体を気に入ったようで、衣食住、そしてある程度のお金も与えてくれて不便は無かった。
そして何より変わったことは、男に抱かれることに幸せを覚えたこと。
「ほんと、お前は最高だな」
もっと、俺を求めて……
「おいっ、締めつけるな…っ」
俺は腕と脚を男の身体に巻き付け、中は無意識にモノを離さないと締めつける。
「中にっ…出すぞ」
「奥に…っ、きてっ…」
中でドクドクと注がれる熱を受け止める。
動けない俺を気に止めることなく呼吸を整え落ち着かせると、散らばった服を集め帰り支度をする。
「また、楽しませてくれよ」
そう言ってこちらを見ることなく部屋を出ていった。
優しい言葉……ましてや愛の言葉なんてものはない。
でも『また』という言葉が、俺に居場所を与え続けてくれる。
俺の居場所はここしかない。
その場所にいられるなら何度だって抱かれる。
そんなある日、俺はコンビニに向かうため部屋を出た。
暫く歩くと見覚えのある二人組の姿を捉える。
「今日ってアイツ、空いてるっけ?」
「今日は社長だから無理だ」
「マジかよ……昨日、行けば良かった」
後悔する言葉が嬉しかった。
その言葉は俺を求めている証拠。
「今回は珍しく飽きないな、社長」
「ほんと、最短って何日だった?」
「確か1週間もなかったぜ。惨めに捨てられたもんな」
俺は次の一歩を踏み出せなかった。
遠くに聞こえる笑い声が頭に響く。
結局俺は、男を喜ばせる玩具でしかない。
玩具はいつか飽きる。
飽きることがなくても古くなる。
でも新しい玩具はいくらでも見つけられる。
要らなくなった玩具は……捨てられる。
自分の居場所は他人に与えられるんじゃなくて、自分で作らなきゃいけない。
そしてその場所を守るためには、誰かに寄生される存在にならなきゃいけないんだ。