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数珠つなぎ

第5章 お前らを逃さない

寄生される存在。

つまりは『俺がいないと生きていけない』という存在になるためには外の世界を知る必要があった。

真面目な仕事なんてもう出来ない。


だからこそ裏の世界で生きていくための術を学ぶ必要があった。

その為に今まで多くの人に抱かれてきた俺の身体を存分に利用した。


社長との営みの中で甘えれば、条件付きだが簡単に仕事を手伝えるようになった。


その条件は『夜の奉仕』を辞めないこと。


俺は二つ返事で了承した。


最初は借金の取り立てについて行くだけ。

『何で素人のお前を連れていかないといけないんだよ……』

ブツブツと文句を漏らしていたが、夜のご奉仕を約束したらコロッと態度を変えた。

逆に誰が俺を連れていくかで、揉めるほど。


ホント、母にこれだけは感謝してる。



いい身体に産んでくれた事を。



取り立ては毎日で、家や会社、工場を訪れては罵声を浴びせる。


その中で世の中にはこんなにも『金』を必要としている人がいるんだって実感した。

どう考えたって法外な金利。

そして当の本人には借金を返すあてなんてない。

惜しげもなく地面にオデコを付けて土下座し、返済期日を伸ばしてくれとせがむ。

そして妻が稼いだ金、親の年金、職場の金に手を出し返済していく。


周りにいる人を不幸にしてでも、『金』が欲しい。


そんなヤツに限って、博打で一発逆転できると思ってる。


世の中なめ腐ってやがる。


だから俺みたいな不幸な人間が生まれる。



どいつもこいつも母親と一緒。



どんなに綺麗事を言ったって『人』より『金』


優先されるべきは『金』


『金』さえあれば幸せになれる。


そして『金』がなければ不幸になるんだ。




「ほんと……お前は最高だよ」

高級ホテルで社長に抱かれた後、腕枕をされながら髪を撫でられる。

「俺も……社長が一番」

今日も媚びを売る事も忘れない。

「部下もお前の仕事っぷりに感心してだぞ」


って、どっちの仕事ぶりを言ってるんだ?

まぁ、いっか。


「で、次の仕事なんだか……お前にしか出来ない仕事をしてもらう」


初めて……俺しか出来ない仕事を任された。

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