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数珠つなぎ

第6章 僕らは離れない

【雅紀side】


俺がどこに行くかも伝えていないのに、その場所に適した服を持ってきてくれた。


きっと潤はわかっている。

これからどこに行くのかを……


着替え終わると、久しぶりに2人そろって家を出る。

車に乗り込むと、スマホを取り出した。

「住所なんだけど……」

「大丈夫だよ」

潤はナビを操作し始めた。

そして目的地履歴を表示させると、一番上に俺の行きたい場所の名前があった。

「えっ?」

いくら見たって変化しないナビをジッと見つめていた。


どうして場所が登録されてるの?


それだけでも驚くのに、表示されているのは『目的地履歴』


潤はあの場所に行ったことがあるの?


それに一番上に表示されているってことは最近、潤は行ったの?


「出発するね?」

動けない俺に身を乗り出してシートベルトをつけると、車を走らせた。

そして潤はナビをほぼ見ることなく、目的地へと俺を連れていく。


もしかして、何回も行ってるの?


いろんな疑問が頭に浮かぶけど、口に出せないまま目的地に到着。


「行ける?」

潤の手が俺の手に重なった。


俺はふぅーっと大きく深呼吸した。


「うん」

車を降りると潤は俺の隣に来て、手をギュッと握りしめた。

そして迷うことなく一直線に、あの場所へと俺を導いてくれた。


「ここ……見て?」

潤が迷うことなく指差す場所には俺の大切な人の名前が並ぶ。


父ちゃん……

母ちゃん……

兄貴……


ぼやけていく視野の中で、震える指で名前をなぞった。

「潤、もしかして……」

ようやく疑問をぶつけられた。

「月命日にはここに来て、雅紀の様子を伝えてた。包み隠さずね」

手を引かれ、永代供養墓へと向かう。

「やっと見せることが出来たよ。強くなった雅紀を……」

潤が手を合わせゆっくりと目を閉じた。


俺も手を合わせ、目を閉じると温かいものが頬を流れ落ちた。



もう、知ってるよね?


俺の隣にいる大切な人。


今まで苦しめてしまったけど……明日で全て終わる。


だから、最後まで見守ってね?

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