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数珠つなぎ

第7章 俺も愛されたい

【翔side】


「これで完了……」

データをすべて消去し、ノートパソコンの電源を落とす。

復元は不可能だから、顧客の情報が漏れることはないだろう。


もちろん、働いていた人々の情報も。


全うな道を歩んでいるヤツもいる。

逃れられなかった過去のせいで、今を台無しになんてさせない。


ふぅーっと溜め息をつきながら椅子の背もたれに身体を預け、天を仰いだ。

何十回、何百回と見てきた天井。


この光景を見るのも最後か……


明日、ここには強制捜査が入る。

昔からの馴染み客の警察関係から聞いた。


今まで幾度となく窮地を救ってくれたが警察内部も変わった。

昔の様に『金』や『権力』ではどうすることも出来ない。

いかに犯罪者を排除し、検挙率を上げるかが重要。


メンツが大事って事だな。


潤たちが俺を逮捕させる為に動いていたことは知っていたが、まさかここまで力をつけるとは思わなかった。


執念ってやつなのか……


そろそろ潮時だとも思っていたから、決断するキッカケをくれたヤツらには感謝している。

って、俺に感謝されたってヤツらは嬉しくもなんともないか。


どんなに稼いだって手に入れられないモノ。


俺はそれを『金』で失った。

そしてそれは『金』では決して買う事は出来ない。


もしかしたら心のどこかでヤツらが羨ましかったのかもしれない。


だからこそ目の前で見たかった。



『愛』が『金』に負けるのを……



でもそれは失敗に終わった。


つまりアイツらは俺の犠牲者。

だから俺はヤツらに詫びなければいけない。


俺がこの世界に引きずり込んだから……



体勢を起こし、引き出しを開ける。


そこには封筒が4つ。


宛名は大野智、相葉雅紀、二宮和也、松本潤。


これを送ったからといって、ヤツらが許してくれるとは思わない。


ただの独りよがりで……自己満足なだけかもしれない。



けど、自分のした事にはケリをつけたい。


そして俺も……前に進みたい。


俺も元を辿れば、犠牲者じゃないのか?

『俺』より『金』を選んで家族に捨てられた1人なんだ。

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