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数珠つなぎ

第7章 俺も愛されたい

4つの封筒を郵便ポストに入れた。


「眩しいなぁ……」

空を見上げると、太陽の光が降り注ぐ。


ドンッ…


「すみません」

スーツを着た人と肩がぶつかった。

後ろを振り返ると、その人は何事もなかったように歩いていく。


俺の周りを沢山の人が行き交っていく。


こんなに人って……いるんだな。


俺が店を出る時は真夜中で、人なんて誰もいない。

まるで地球に一人、取り残されているように感じていた。


ポケットから一枚のハガキを出す。


そこには雲ひとつない空の写真。


この何気ない写真がいつも俺を孤独から救い出してくれた。


ここに今、人がいなくても同じ空を見上げている人がいるって教えてくれた。



だから『ありがとう』って伝えたい。



裏を見ると送り主の住所も名前もない。

あるのは『CORREOS』という消印だけ。


「あっちは朝かな?」


もう、起きてるかな?


きっと……凄い寝癖だろうな。


あの人も同じ空を見上げているだろうか。



俺はあの人に会いに行くと決めた。



スペインに……


今はこの写真の空の下にいるかはわからない。

いたとしても、見つけられる保証は何もない。


ヒントも写真に映る小さな建物だけ。


けど、見つけられる気がする。

ここにいる気がするんだ。


このハガキは、不器用なあの人からのメッセージ。


『会いに来い』って。


身体から始まった関係。

本当の『愛の言葉』なんて、お互いに囁いたことはない。


感情のない、ただお互いの快感を高めるため、悦ばせる為の言葉。


と、言い聞かせていたのかもしれない。


どこかで『愛』を求めていた。

けどあの人が囁く言葉が本物だと思えば、また失うかもしれない。



一番に欲しいと思ったのはあの人の『愛』



だからこそあの人の言葉を『偽り』と思うことで、自分が傷つかないようにした。

失うくらいなら、始めから無い方がいい。


周りの本物の『愛』が羨ましくなるならば、壊せばいい。



俺と同じ『金』でって……



そうやって自分の存在意義を守るしかなかった。

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