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ワルキューレの朝ごはん

第5章 闇

真っ白なシーツなら泥につける事は躊躇するだらう、しかし、今の私は泥に浸かっている、泥に塗れた団子を泥に浸した所で今更、どうしたと云うのだ・・・

現実の壁に跳ね返されて認識
した、存在は根源的に儚いと
云うこと、そして人間の命は束の間の旅なら、せめて快楽に
消費しないと損だと云うこと。

その日その日の歓楽を求めて
快楽主義に走り、金儲けの為
に売春に狂奔した、背後には
人の存在の場所と時間は現世
にしかない、と云う人生観。

向うには何もない、せめて楽
しく充実して生きて潔く無の
闇に没して行こうと云う一種
の悲壮感がそこにはあった。

奴は微笑んでいた、寒気を感
じた、それは獰猛極まりない
狩る者の微笑みであり、獲物
を前に見出した狼さながらの
随喜なのだから・・・

アルビノ気味の肌は邪な色欲に飢えた顔も名前も住所もない
素性の知れない男たちを誘蛾灯の灯火にむらがる羽虫のように陰湿な迄の磁力で引き寄せた。

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