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隣のアイドル

第3章 *Episode2




『いつまで待たせんだよ!!
もう帰るぞ!!』






受付で怒鳴り始めたおじいちゃん



大学病院の待ち時間が長いのは重々承知のはず。






「申し訳ありません。
本日金曜日で大変混んでまして……」


『もう2時間も待ってるんだ!』


「そうなんですね……
ただ、他にも待ってる方が…」






受付に身を乗り出すおじいちゃんを、なんとかなだめようとする美咲に容赦なく怒鳴り散らす。



耳が遠くて声が大きいのか、
それとも元々この声量なのか……







「もう少しお待ち…
「お話伺いましょうか?」






周りの患者さんの目もある中で困り果てた時、横から助け舟を出してくれたのは亮平さんだった。







『おい、何時間待たせるんだ!
俺は帰るぞ!!』


「お待たせして申し訳ありません。
ただ、どこか悪くていらしたんですよね?
治療をご希望でしたらもう少しお待ちいただけませんか?しっかりと悪いところを見つけるために1人1人に時間がかかってるんです。」


『ずっとお腹が痛くて、町医者じゃ寝てろ寝てろってそればっかしで…』


「そうですか…それはお辛いですね。
ここまではどうやっていらしたんですか?」


『家がすぐそこでな、ここができた時からよう見てたわ。』


「そんなに前からですか。
そしたらこの辺りは僕なんかよりも詳しいですね。」





いつの間にか怒らなくなったおじいちゃんの肩を引き寄せながら、受付から遠退いていく亮平さん。



その背中を見つめながら、美咲はホッと胸を撫で下ろして受付の椅子に腰掛けた。


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