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お酒とオールバックに溺れる夜

第16章 第16酒 -お墓参りの味-

土曜日
いつも元気な純さんの様子が
おかしかった。

周りのお客さんや孝哉さんは
気付いてないみたいだったけど

やっぱり
何だか、おかしい...

いつも通りに
振る舞っているけど

心此処に在らずというか
どこか
上の空で

ぎこちない笑顔の
純さんが心配で仕方なかった。

...
......

例の如く
最後の一人になった。

「純さん...

何かあった...?

大丈夫...?」

純さんは
ドスっと
隣の席に腰を下ろすと

お気に入りの
ウィスキーを飲み始めた。

「明日...

お袋の命日...」

もう一度
ウィスキーを
口に含むと

遠くを見るように
カラオケの画面を見つめながら

グラスに入ってる
氷を
指で転がした。

カラカラと
乾いた音が響いて

悲しい気持ちになった。

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