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お酒とオールバックに溺れる夜

第17章 第17酒 -幸せの味-

お墓参りの後、

純さんのお父様は
タクシーの仕事があるからと
先に帰ってしまった。

純さんは
大きな欠伸を1つすると

「家まで、送る」

と言ってくれて

15分程の距離を

ソワソワした気分で
一緒に歩いた。

「お母様のお墓が

私の家とこんなに近いなんて

凄い偶然ですね!」

お互いに
素面で話すのは
最初に出会った
屋上以来だった。

私は
緊張を解すように
とりとめのない会話を続けた。

ふと
純さんが足を止める。

純さんの目に止まったのは

『小さな水族館』

と書かれた看板だった。

そこは、
熱帯魚や
アクアリウム用品を揃えている
小さなお店だった。

「入るぞ...」

純さんの寄り道は
私にとっては
初めてのデートとなった。

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