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お酒とオールバックに溺れる夜

第10章 第10酒 -急接近の味-

孝哉さんは
本当に優しい人だ。

いつも紳士的で
言葉も丁寧で
お酒に乱れた姿も見たことがない。

孝哉さんの彼女になる人は
とても幸せだろう。

「マスターのことで
悩んでるんでしょ?」

図星過ぎて
何も言い返せなかった。

その時
純さんは
カウンターで
他のお客様を接客している
最中だった。

そして
孝哉さんは
内緒話をするみたいに
私の耳元で
呟いた。

「マスターを好きになって
嫉妬で、ボロボロになる女の子を
たくさん見てきたんだ...

夜の世界は、人気商売
嫉妬がお金を生む

でもそれが、
マスターの仕事...」

孝哉さんの言葉は
胸を鋭く抉った。

頭では
分かっているつもりだったのに
心が付いていかない。

「私は、ストーカー失格です
追いかけているだけで
十分だったのに...

いつの間にか
純さんの心が欲しくなってるんです...」

孝哉さんは
沈んでいる
私の手を握りしめた。

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