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護(まも)る

第2章 ふすまの向こうで……。

『ああっ、姐《あね》さん……』
 
『ああ、安田《やすだ》っ……こんなこと……分かってるの?』
 
 八畳程あるうららの勉強部屋のふすまの向こう側から女の泣き叫ぶような声がした。女の声の主はうららの母麗子《れいこ》で、水橋組長水橋|勘三郎《かんざぶろう》の妻だ。
 
 安田と呼ばれているのは安田マサルという男で、入門して半年になる若衆だ。
 
『ああ、姐さん、どうです? もっと締めてくださいよ』
 
『ううんっ……』
 
 麗子の搾り出すような声。
 
『ああ、ん……お嬢さんがいるとは思えませんよ。姐さん……」
 
 低い安田の声にため息が混じる。
 
 パンパンという肉体がぶつかるリズミカルな音に麗子の艶かしい声。その中にビシャビシャと水が飛び散る音。ゴドゴドゴドッっと地鳴りのような音の中に――。肉と肉がぶつかり合う音が徐々に速さを増す。

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