
狼からの招待状
第4章 迷路 -MIROH-
珈琲を飲み干して、カップを受け皿におく…左手首の真紅と黄金のブレスレット……
「亡くなった姉妹は」ユノがぽつりと云う。「ハロウィンの夜に─どうしてあの公園に─」「東京の公園を夜に散歩する気分だったんでしょう、お揃いの白いニットで。それが命取り」「気の毒な…。軽い気持ち─が」 グレがふと、顔をあげた。表情は柔らいでいる。
「ユノ先輩、来月の降誕祭のミサ。あの教会で最後のミサになるそうです」
灰色の建物の向こうに、グリーンに塗られたバスが停まっていた。
……(最後のミサ、降誕祭のミサであの教会は閉鎖─)黒い革靴の足を急がせる。バスはエンジンを掛けたらしく、大きな車体を震わす。
…(殺人があってあの辺りは危ないし)─グレの声が続ける─(教会の司祭が高齢で)…ユノを眼鏡ごしに冷たく見据えた…老いた神父。…(最後の降誕祭ミサ。一緒に行きませんか)…黒い排煙を吐き出しながら、ゆっくり動くバスを追って走った。
──12月の日は早い。グレと晩秋に見舞って以来、毎日のようにこの高台のキャルバリー専門病院に来ている。
「亡くなった姉妹は」ユノがぽつりと云う。「ハロウィンの夜に─どうしてあの公園に─」「東京の公園を夜に散歩する気分だったんでしょう、お揃いの白いニットで。それが命取り」「気の毒な…。軽い気持ち─が」 グレがふと、顔をあげた。表情は柔らいでいる。
「ユノ先輩、来月の降誕祭のミサ。あの教会で最後のミサになるそうです」
灰色の建物の向こうに、グリーンに塗られたバスが停まっていた。
……(最後のミサ、降誕祭のミサであの教会は閉鎖─)黒い革靴の足を急がせる。バスはエンジンを掛けたらしく、大きな車体を震わす。
…(殺人があってあの辺りは危ないし)─グレの声が続ける─(教会の司祭が高齢で)…ユノを眼鏡ごしに冷たく見据えた…老いた神父。…(最後の降誕祭ミサ。一緒に行きませんか)…黒い排煙を吐き出しながら、ゆっくり動くバスを追って走った。
──12月の日は早い。グレと晩秋に見舞って以来、毎日のようにこの高台のキャルバリー専門病院に来ている。
