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狼からの招待状

第3章 火影

 ……(起きて。ユノ、遅れるよ)(今日は夕方から、挨拶の会合があるから─夜は…あのレストランで)(服─選びました、着てみて。赤がユノ似合う…)(良い車…、見てユノ。僕もドライブ行きたい)(ユノ、この曲のアレンジでね…)(─ユノ…)目をぼんやり開ける。
 パステルカラーの丸い目覚まし時計は5時。
 起き上がり、ふと夢の続きをなぞる思いで、時計の傍らの写真立てを手に取る。(チャンミン) 写真立てのなかのふたりは、秋の終わりの日が翳る窓辺で、肩を抱き合い、笑う。(スペインの街のカフェだった)
 ……(チャンミンの夢─久しぶりに、見た)熱いシャワーで、皮膚を擦る。(お話しなければ、ならないことが)キム侍従の声─(シム・チャンミンは引退だから)昨夜遅くまで話した、事務所のトップたちの声。
 ……(チャンミン)顔を上げ、熱い飛沫をもろに被り…(今夜の最終便で─また会いに、行く)……両肩の筋骨で、シャワーの粒が縦横無尽に跳ねる。
 ──〝…声援に応えられる、演技を…〟〝信頼して観られる俳優に…〟TVの大画面に、若手の男優が映っている。

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