
邪恋の爪痕と片恋の彼
第8章 知らない自分
「――――じゃぁ…ペンダントも…捨てたんですか?」
――――ペンダント…
俺は野田から送られてきたペンダントを思い出す…。
「あれは…捨てれない…だろ?」
「じゃぁ、あの――――…ダサい…ペアグラス…も?」
――――ペア…グラス…
部屋の状態を思い出す……。
部屋にはなにもなく…唯一床に置いてあるのは…スマホの充電器…。
クローゼットの中には、少ない下着と一着だけ残した部屋着…、それと会社用のスーツとワイシャツ…何本かのネクタイ…。
キッチンには捨てられずにいる…野田の結婚式で渡された…ダサい名前入りのペアグラス…が、流し台のところにある。
「――――捨てるときは…一緒に捨てようって…真壁と約束したから……捨てないでいる」
