
邪恋の爪痕と片恋の彼
第2章 ペアグラス
「俺は――――…境井さんと…SEX したかったんですよ…“好き”だから」
――――“好き”
俺はこの言葉に、“野田”を思い出す。
“好き”だった――――…入社したときから…
野田と一緒にいられるなら…何だって出来た。
でも――――アイツは…結婚した。
可愛い奥さんと…アイツは…
「“好き”って――――なんだよ…。俺は真壁の事を…何にも知らないし…真壁だって…俺のこと……何も知らないだろ?」
「境井さんだって――――…野田先輩のこと…知らなかったじゃないですか…」
ビクッとした――――…
確かに…俺は…野田の事を…全部は知らなかった。
会社で一緒にいる時間のすべてが…野田の全てだと思っていた。
そんな訳…ないのに――――…
知りたくなかった…アイツが…
誰が好きで――――…結婚まで考えてるとか…
「“好き”だがら――――知りたくなかった…」
分かっていたから…
野田は…普通の――――ごく普通の…
恋愛をするって…事を…。
