
邪恋の爪痕と片恋の彼
第9章 波
俺の状態を知っているのは…家族でも祖父さんだけ――――…
素直に甘えられたのも…祖父さんだけだった。
目の前で倒れ――――運ばれる境井さんに…
昔の自分が重なる。
――――やっぱり…貴方はゲイなんですよ…。
そう、確信して…更に愛しくなる。
祖父さんに、連絡したことで…処置も病室も親族対応のV.I.P.レベルだったのは俺でも引いたが…、「可愛い孫のたのみじゃからな」と祖父バカを発揮してくれた。
そして、その祖父すらも…
「昔の千寿を思い出したわい…」
と、遠い目をした。
――――昔の俺…
俺は祖父の優しい視線にうつむく――――。
泣きそうだったから。
