
邪恋の爪痕と片恋の彼
第3章 初恋の芽
そして、境井さんは――――…。
「お幸せに――――……ぅえ!ぅぐっ、」
“お幸せに”を飲み込めず――――…吐いた。
「お、おい――――!境井?!大丈夫か?」
「大丈夫、ぅえっ!大丈夫…、の、飲み過ぎ…た…。悪い――――トイレ…うっぷ!」
足早にその場を離れた境井さんは、口の中の吐瀉物をトイレの便座へと流した――――。
その、様子を見ていた俺はすぐに後を追った。
――――泣いてる…?
「うっ…う――――…う…野田ぁ…野田ぁ…」
「////…」
その時――――…俺は…この人を…
この…腕で抱き締めたかった。
抱き締めて――――…
俺の、消えた【芽】を――――…
取り戻したかった。
