
邪恋の爪痕と片恋の彼
第4章 日常訓練
――――次の日…
俺はいつも通り、電車に乗り――――最寄りの駅で降り会社へ向かう。
昨日のだるさが残るかと思ったが…そんな事もなく…スッキリとした目覚めだった。
駅を抜け、オフィス街をしばらく歩くと、ひときわ大きなビルの前で俺は足を止める…
大手…不動産会社の本社ビル――――…
普通の大学からこの会社に入社出来たのは…俺の中では奇跡に近かった。
そこで、俺は野田と出会った…。
配属されたのはメディア宣伝部で右も左も分からない部署たったが、野田と一緒なら何故か頑張れた――――。
俺は――――…これから、頑張れるだろうか?
重い足に力を入れ、ビルへと向かった。
しかし、いざ――――職場に入ると、
恐ろしいくらい通常運転で…拍子抜けした。
結婚式の後、3日も連休があれば…連休の行事の方が印象に残るらしく…結婚式の件に触れる社員も少なかった。
「野田は――――まだ、新婚旅行中か?羨ましいなぁ~」
上司が野田の席を見ながら笑う――――…。
“羨ましい”
上司は“ハワイに新婚旅行”が羨ましいと言っているのは分かるが……
俺は…“野田と新婚旅行”…が…羨ましくてならない。
――――ま…羨んでもしょうがない……そこのポジションには俺は行けないのだから。
「そうだ境井――――…秋口の展示会資料来てたぞ?」
上司に言われハッと我に返る。
「あ、はい――――…ハウジングギャラリーの件ですよね?」
