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ブラコンですが、なにか?

第8章 Brother's melancholy

【翔にぃside】


「じゃあ、行ってくるね」

リビングで持ち帰った仕事をする俺に和也が声をかける。

「おう、気をつけてな」

「行ってきまーす」
「留守番、よろしくね」

和也に続いて、ニヤニヤ笑いつつ自慢げに声をかけてくる雅紀と潤。


ホント、昨日残業すればよかった。


和也が昨日珍しく『買い物に行きたいから誰か付き合ってくれないかな?』と俺たちに言ってきた。


和也は元々、物欲もない上にインドア派。

欲しいものがあれば基本、ネット注文。


でも実物を見てみないと……という時は外出する。

それが今日だった。


和也と出かけるとなると毎回、誰と出かけるか揉めに揉める。


でも今回は持ち帰りの仕事があり立候補できず。

智にぃも作品の締め切りが迫っており、同じく立候補できず。


即ち……俺たちは留守番だ。


「智にぃのご飯だけ、お願いね」

「あぁ、わかった」


智にぃは作品に没頭すると、食事すら声をかけないと取らない。

昔、それで倒れた事があるから締め切り前となると和也の心配は尽きない。


「ホントに……大丈夫?」

「大丈夫だって!冷やし中華くらい作れるって」

「そうそう。それに作るって言ったって……麺を茹でるだけでしょ?」

クスクス笑っている雅紀は完全に俺の事をバカにしてる。


でも、悔しいがな言い返せない。


「いや、それすら危うくない?」

「だよね、やっぱり……」

潤は雅紀に乗っかってバカにしてるけど、和也はマジで心配してる。


俺って、そこまで料理に関して信用されてないのか?


「もう、大丈夫だから早く行ってこい!」

「ほら、翔にぃもそう言ってるし……行くぞ和也」

すっかり足が重くなった和也の背中を押して玄関に向かう潤。

「ぜーったいに、邪魔しないでよね!」

「わかったよ」


雅紀に釘をさされるなんて、最悪だ。


絶対に冷やし中華を完璧に作って、そして写メを送って、目に物見せてやる。

って、具材は和也が準備済みだから盛り付けるだけなんだけどな。

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