テキストサイズ

ブラコンですが、なにか?

第10章 Be loved by Masaki①

「ただいま」

家に誰もいない可能性もあるけど、いつもの習慣で言ってしまう。

「お帰り、和也」

でも今日はリビングの方から雅にぃの声が聞こえた。

「あれ、大学は?」

「んー、午前中の講義だけだったから」

クルクルとシャーペンを回しながら答える。


雅にぃが勉強する場所はいつもリビング。


静かな部屋だと、ムズムズして集中できないんだって。


騒がしい方が捗るって言うけど、俺たちが楽しく話していたら結局、手が止まってる。


雅にぃらしいけど、心配になるんだよね。


「今日は……もう終わりっ!」

パタッとノートを教科書を閉じた。


ほら、今だってね?


「まだ勉強してていいよ?夕飯作るまでには時間あるし」


智にぃは打ち合わせで家にいない。

翔にぃは仕事で潤は部活。


勉強する環境としては悪くない。

それに俺が帰ってくるまでは集中して出来ていたと思う。


やっぱり……勉強の邪魔はしたくない。


「ダメっ、和也はここにいるの!」

部屋に行こうとした俺を、立ち上がって後ろから抱きしめた。

「でもさ……」

「気を遣い過ぎなの、和也は」

クルっと体勢を変えると、雅にぃは俺の頬を手で包んだ。

「本当に、大丈夫なの?」

ジッと雅にぃの目を見つめると綺麗な瞳がゆらゆら揺れた。


ホント、嘘つけないんだから……


「俺、着替えてくる」

意を決して冷たく言い放った。

雅にぃは少し寂しそうな顔をすると、頬を包んでいた手をゆっくりと下ろした。


わかってるよ?

雅にぃが寂しがり屋だって事。


「着替えてくるだけだよ?俺もここで宿題するから。雅にぃも……ね?」

「うん、一緒にやろう!」

水を得た魚のように雅にぃが生き生きした表情になる。


やっぱり、雅にぃには笑顔が一番。

それに俺も……寂しがり屋だから。


「着替えてくるね」

俺は急ぎ足で部屋へと向かった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ