ブラコンですが、なにか?
第12章 Holiday of Kazunari①
コンコン…
「はーい」
呑気な返事が部屋の中から聞こえた。
「俺だけど……入っていい?」
「どーぞ」
ドアを開けて部屋に入ると、キャンバスに鉛筆を滑らせる智にぃの姿。
「ごめん、仕事中に」
「大丈夫。ほぼ、下書き終わったから。でも珍しいね?翔が部屋に来るなんて」
振り返るとニヤリと口角を上げて笑った。
何で部屋に来たか、わかってるくせに。
「和也、疲れて熟睡だよ?休ませるって言ったの智にぃだろ?外で何したんだよ」
「翔……それは愚問だ」
どや顔で俺に答えて見せる智にぃ。
きっと最近覚えた難しい言葉だな。
でもそのどや顔は今日の事を思い出し、どんどん頬が緩んでいく。
「智にぃ、顔が気持ち悪すぎるから」
「何とでも言え。今の俺には痛くも痒くもない」
「そーですか」
冷たく返事すると立ち上がって、俺の隣に立つとグッと肩を引き寄せる。
「今日の和也、最高に可愛かったぞ。それが気になったから来たんだろ?」
軽いノリといつになく饒舌な智にぃ。
言いたくて仕方ないんだな。
俺はペチンと肩に乗った智にぃの手を叩いた。
「興味ありませんよ」
「嘘つけぇ」
肘で脇腹を突いてくる。
「俺が来たのは和也が心配してたから。絵が描けるのかって……」
「えっ、そうなの?全然、余裕よ。和也のお陰でいい絵が描けそう」
絵の依頼をした人って、主演の松本潤が好きなんだよね?
和也をモチーフにしちゃダメでしょ?
「それって……大丈夫?」
「それも……愚問だ」
かなりのお気に入りのワードみたいだ。
「はいはい。じゃあ、俺も寝ますね」
「えっ、話聞かないのー?」
「聞きませーん」
話す気満々の智にぃに背を向け、ヒラヒラと手を振って部屋を出た。
そりゃ、気になるけどさ……
智にぃの口からは聞きたくない。
だって直接、可愛い和也の姿を見れるんだからさ。
ヤバい、週末が楽しみだ。