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ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

 クリシーは考えていました。
 あの少女は何者だろう――と。
 ついさっき、ピスティが新しい国王についたばかりです。
 広場では、それを喜ぶ民衆がまだ騒いでいますが、クリシーは、その騒ぎからいち早く抜けたのでした。
 新しい王が誕生したことは嬉しいことですが、クリシーには、ひとつ心配事があったのです。
 それは、見慣れない少女のことでした。
 家への道を歩きながら、クリシーはずっとそれだけをは考えていました。
 ピスティには、仲間がいます。ゲンと、フウと、ライ。いずれも優れた仲間たちです。
 しかし、広場では、もう一人、見慣れない人物がいました。
 それが、クリシーが気にしていることでした。
 その人物は、少女でした。白い衣に身を包んだ少女です。肌は抜けるように白く、つり目で、小柄で、表情は豊かで、見た限りは、いたずら好きな子猫のような、愛くるしい少女でした。
 しかし、クリシーはそれでも少女が怪しく思えてならなかったのです。
 なぜなら、髪の色が真っ黒だったから・・・・・・。
 髪が黒い人間なんていません。遠い東の国にはそういった人たちがいるとは聞きますが、そんな遠くから人が来るはずがありません。ピスティの仲間のゲンは東からはるばるとやって来たようですが、ゲンくらいのものでしょう。
 だから、気になるのです。黒髪の、あの愛くるしい少女が何者なのか・・・・・・。
 しかし、まったく何者かわからないわけではありませんでした。
 黒い髪を持つ者――その正体に、クリシーは心当たりがありました。

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