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ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

 それは、クリシーが僧侶だからわかることでした。教会がある意味、神が何者なのか、そうしたことを、僧侶でない人間はほとんど知らないでしょう。だから、民衆はあの少女を見てもなんとも機にしていなかったのです。
 しかし、僧侶であるクリシーが思うに、あの少女は恐ろしいモノに違いありませんでした。
 クリシーの考えが当たっているならば、あの少女は、おそらく――魔法使いでしょう。
 だとしたら、アウィーコート王国は滅びてしまうかもしれません。
 ――どうしたものか。
 考えながら歩くうちに、ピスティは、すでに家の前に到着していました。
 扉をひらいて中に入ろうとすると、ちょうど中から出てこようとしていた娘と鉢合わせました。
「おお」
 クリシーは驚いて一歩さがりました。娘も同じように飛び退きます。
「お父さん」
 娘は心配そうにクリシーを見ています。
「どうしたの」
 そんな娘の顔を見て、クリシーは閃ました。
「頼みがある」
「なに?」
 問いかける娘に対して、クリシーはある考えを話しました。

 ※

 その頃、広場では、まだ騒ぎが続いていました。
 ピスティと仲間たち。それを囲む民衆たち。
 そんな中で、ピスティはみんなに向かって言いました。
「僕が今生きているのは、彼女のおかげなんだ」
 そして、近くにいたレナのか細い腕を掴んで、高くあげました。
「彼女は、僕の命を助けてくれた。だから僕は――」
 言うつもりだったはずの言葉が、喉元につまって出てきません。
「僕は――」
 ピスティは、顔が熱くなるのを感じながら、両手でレナの手を包み込みました。
「ど、どうしたのよ。顔を真っ赤にして」
 そういうレナの顔も、ほんのりと桃色に染まっています。そんなレナの顔を正面から見つめながら、ピスティは思いきって、胸の中にある気持ちをぶちまけました。
「僕は――レナと結婚する!」
 広場は、一瞬静まり返りました。
 が、すぐに、また喚声が沸き上がりました。
 これには、ゲンも驚いたようで、目をぱちくりさせています。仮面をつけたフウでさえも、驚きを隠しきれていません。目をカッと開いて固まっています。

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