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ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

 いや、よく見ると言い争っているのではありませんでした。
 どちらかと言えば、門番の方が乱暴な口を聞いているようです。手を出すことこそありませんでしたが、門番は強い調子で女に何か怒鳴っています。
 女はといえば、頭をさげたり、兵士にすがりついたりと、必死に何かを訴えている様子です。
 女が何者かは知りませんが、その必死さを見ると、きっと、よほどの事情があるのでしょう。
 ピスティは、なんだか女がかわいそうになって、門へ駆けつけてみました。
「どうした、何があったんだ」
 ピスティが声をかけると、門番は急に背筋を伸ばして敬礼をしました。女は何が起きたのかわかっていない様子で、ただ首をかしげてピスティを見ています。
 門番が、言いました。
「王さま。この女が王さまに直接会わせろといって聞かないのです。庶民がいちいち王さまに面会していたのでは、いくら時間があっても足りないというのに・・・・・・」
 門番は、煩わしそうに女を見ます。
 門番の言い分はもっともです。しかし、女は目に涙をためています。歳はピスティよりもやや上でしょう。粗末な身なりをしていますが、豊かな金髪が肩から背中を覆っていて、ぽってりとした唇は、泣いているせいか、かすかにわなないています。そして大きく膨らんだ胸元には、わずかに谷間が見えています。
 ピスティはごくりと唾を飲みました。
「仕方がない。今回だけだ。僕に会って何を言いたかったんだ」
 ピスティは心の内を隠しながら、そう尋ねました。
「お願いがあるのです」
「どんな願いだ」
 ピスティは問い掛けつつも、胸がどきどきしているのを感じていました。
「どうか、どうか助けてほしいのです」
 女は切ない声で訴えます。

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