テキストサイズ

ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

 レナの魔法に頼ってしまいたくなる気持ちを、ピスティはおさえました。
「大丈夫。僕は王なんだ。この国の問題は、僕に任せておいてよ」
「でも、このままじゃ・・・・・・」
 さらに言い募ろうとしているレナに、ピスティはできる限りの笑顔を作ってみせました。
「レナの気持ちは嬉しいよ。だけど、僕はレナが元気でいてくれることの方がもっと嬉しい。だから、今は休むんだ。魔法の力が必要になったら、遠慮なく頼らせてもらうから。――さあ」
 ピスティは椅子から立ち上がると、レナの背中へそっと手を当てて、レナにも立つように促しました。
「待ってってば」
 レナはそれでも頑張ろうとしますが、ピスティには逆らわず、すんなりと椅子から腰をあげます。
「レナ。今日はいい天気だ。庭には綺麗な花もたくさん咲いている。ちょっとの間、散歩でもしてくるといいよ」
「でも、本当に私は――」
「ゆっくりしてくるんだよ」
 ピスティはなかば無理矢理にレナを会議室から出しました。そうでもしないと、レナは休もうとしないでしょう。
 レナが部屋から出ると、ピスティは扉を閉めて、また席に戻りました。もっとも、ピスティの意見など誰も聞いてくれないのですが・・・・・・。

 ※

 夕方になって、会議は終わりました。といっても、答えが出たわけではありません。ただ時間が過ぎただけです。
 せっかく王になったというのに、会議をまとめることさえできない自分に、ピスティは落ち込んでいました。こんなことでは、この先、国を治めていくことなどできないでしょう。
 気晴らしに庭へ出てみると、門の方から何やら騒がしい声が聞こえてきます。
 なんだろうと思ってそっちへ目をやると、門番と、見知らぬ女が言い争っていました。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ