ここから始まる物語
第12章 罠からの脱出
ピスティは腹を立てていました。
あなたは王である以前に、もう人間じゃないわ――。
レナの、あの言い分が、あんまりだったからです。それだけではありません。レナはピスティの頬を張り飛ばしたのです。
まだひりひりと痛む頬を、ピスティは撫でました。
腹が立って腹が立って仕方がないので、ピスティは庭へ出ました。夜の冷たい空気で、頭を冷やそうと思ったのです。
外へ出ると、ひんやりとした空気と、優しい闇がピスティを包み込みました。
城から漏れるわずかな明かりが、庭に咲く花々を照らしています。昼間に見るのとは、また違った雰囲気に、ピスティの心はぼんやりとしていきました。
とても心地の良い気分です。もしもここにレナがいて、いっしょにこの空気を味わえたら――そう思ったところで、ピスティは頭を振りました。あんな乱暴なわからず屋といっしょにいて、気持ちのいいはずがありません。
――ひとりの方が気持ちいいに決まってら。
そう思うものの、やっぱり心のどこかに寂しさが残っています。その寂しさを持て余していると、
「王さま」
どこからか声がしました。聞き覚えのある声です。
ピスティが声の方へ目をやると、庭を囲む鉄柵の向こうに、夕方に見た女の姿がありました。
豊かな金髪。ぽってりとした唇。そして大きく膨らんだ胸元。
夕方、いきなり城へやって来て、ピスティに助けを求めてきた、あの女です。
「きみは!」
ピスティは鉄柵に駆け寄って、女に声をかけました。
「どうしたんだ。またお父さんに何か言われたのか」
「違います。ただ、王さまが心配になりまして」
なんでも、レナが城から飛び出してきたのを見たので、何か起きたのかもしれないと思って駆けつけてきたというのです。
あなたは王である以前に、もう人間じゃないわ――。
レナの、あの言い分が、あんまりだったからです。それだけではありません。レナはピスティの頬を張り飛ばしたのです。
まだひりひりと痛む頬を、ピスティは撫でました。
腹が立って腹が立って仕方がないので、ピスティは庭へ出ました。夜の冷たい空気で、頭を冷やそうと思ったのです。
外へ出ると、ひんやりとした空気と、優しい闇がピスティを包み込みました。
城から漏れるわずかな明かりが、庭に咲く花々を照らしています。昼間に見るのとは、また違った雰囲気に、ピスティの心はぼんやりとしていきました。
とても心地の良い気分です。もしもここにレナがいて、いっしょにこの空気を味わえたら――そう思ったところで、ピスティは頭を振りました。あんな乱暴なわからず屋といっしょにいて、気持ちのいいはずがありません。
――ひとりの方が気持ちいいに決まってら。
そう思うものの、やっぱり心のどこかに寂しさが残っています。その寂しさを持て余していると、
「王さま」
どこからか声がしました。聞き覚えのある声です。
ピスティが声の方へ目をやると、庭を囲む鉄柵の向こうに、夕方に見た女の姿がありました。
豊かな金髪。ぽってりとした唇。そして大きく膨らんだ胸元。
夕方、いきなり城へやって来て、ピスティに助けを求めてきた、あの女です。
「きみは!」
ピスティは鉄柵に駆け寄って、女に声をかけました。
「どうしたんだ。またお父さんに何か言われたのか」
「違います。ただ、王さまが心配になりまして」
なんでも、レナが城から飛び出してきたのを見たので、何か起きたのかもしれないと思って駆けつけてきたというのです。